種子田益夫(故人)に騙され多大な被害を負った債権者たちが、常仁会病院グループを所管する厚労省(大臣並びに医政局長)以下、日本医師会、茨城県知事宛に昨年12月以降、同会への指導強化を要請する書面を送り、またそれに対する応対が全くないために抗議をしたにもかかわらず、未だに何のアクションも起きていないという(実は本誌もまた実情を知りたいと考え、取材依頼を行ったが、それも無視されている)。

(写真:陳述書。村山良介氏は牛久愛和総合病院の院長として、種子田が同病院のオーナーであることを証言)

昨年の春以降、未曽有のコロナ禍対策に追われ、厚労省を始め日本医師会も茨城県も日々大変な苦労を続けていることは十分に承知している積りだが、常仁会病院グループの現場においても従前と変わらぬ状況であるという指摘もあることから、目に見えた形での具体的な対応は未だに行っていないと考えざるを得ないのだ。

常仁会病院グループが、草創期から現在に至る長期にわたって重大なコンプライアンス違反を犯し続ける中で、理事長たる種子田吉郎以下一族郎党が経営支配を続けている不当な実態について、何も問題意識を感じていないというのであれば、それこそ深刻な問題ではないか。監督機関が率先して放置することなど許されることではないはずだ。

繰り返すまでもなく種子田益夫は、平成8年頃に表面化した多くの金融機関の経営破綻に関連して、少なくとも武蔵野信用金庫、国民銀行、東京商銀信用組合の3つの金融機関から巨額の不正融資を引き出して破綻させ、多額の税金を投入せざるを得ない状況に追い込んだ張本人だ。

(写真:日本医師会の桧田仁氏の陳述書)

益夫本人は東京地検に逮捕起訴され、有罪判決を受けて服役した事実はあるが、一方で、破綻した金融機関の不良債権を譲り受けたRCC(整理回収機構)が種子田益夫と歌手の石川さゆりに対して訴訟を起こし、不良債権(種子田益夫については約53億円)の支払を求めても、種子田が密かに多額の資金を注ぎ込んで買収を続けたうえで組織化した常仁会病院グループ、中でも理事長の職責にあった長男の吉郎は「父親と病院は関係ない」と非常識極まりない発言を繰り返して一切責任を果たそうとしなかったのである。

これほど無責任な話はない。しかも、冒頭にも挙げた債権者たちはそれぞれ個人で種子田に融資をしており、破綻した金融機関よりも実害は深く影響も大きいと見るべきだが、それに対しても吉郎は完全に知らぬ存ぜぬを続けてきたのである。

(写真:陳述書。田中延和氏は種子田の側近で、長男吉郎を理事長にするために尽力した)

この一事をもってしても、種子田吉郎は病院グループを統括する理事長の任にはあらず、医療法を蔑ろにした経営私物化を続けて来たことは間違いない。それにもかかわらず、監督機関の当事者たちが全く反応を示さず、具体的な行動も起こさないというのは、どういう訳か。種子田益夫が同病院グループの創業者であった事実は揺るがず、複数の金融機関を破綻に追い込むような不正融資を繰り返し引き出し、また多数の個人債権者を騙し続けて調達した資金の過半を同病院グループの拡大及び経営維持に注ぎ込んできた事実もまた決して揺るがない。吉郎は理事長の職にあって全容を知りながら、一切その責任を取ろうとしない態度を取り続けているが、それは社会的にも批判や非難を受けて当然であり、それを看過していることは、監督機関にすれば明らかな責任放棄ではないか。

(写真:陳述書。永田勝太郎氏は種子田に頼まれ東邦大学医学部の医師を多数常仁会グループ病院に派遣した)

監督機関である厚労省や日本医師会、茨城県が何もしないでいるのは、背後に何か事情でもあるのだろうか。もしそうであるなら、その事情とやらを明確にすべきだ。しかし、それが無いとすれば、ただただ怠慢であるという誹りは免れず、監督機関はいずれも種子田一族と同様に批判を受ける対象、というより監督指導を行う立場として、より重い責任を問われることになるのは間違いないところだ。

すでに本誌でも報じている通り、債権者たちは巨額になっている債権(平成15年当時で約368億円)を回収した際に社会的に有為な使い方が無いものかという話を何度も繰り返してきたという。折からのコロナ禍で生活が立ち行かなくなっている人が急増して、日本全体の経済も悪化する危険性が高い中で、特に社会の底辺層を構成していると言われる人たちへのセイフティネットの構築を政府に期待することはできそうもなく、そうであれば、民間版でもできることがあるはずだというのが債権者たちの考えにある。これはコロナ禍に限らず、数年前から起きている自然災害、世界に目を向けた時の飢餓難民問題など各国の対策が追い付いていない状況を救済する一助になるのではないかという発想は大いに歓迎するところであるはずだ。

(写真:債務残高確認書。平成15年現在で300億円を優に超えていたが、種子田には返済する意思は見られなかった)

それに引き換え、種子田益夫はもちろん長男の吉郎を筆頭に長女の益代、次男の安郎たちは自分たちさえよければ、後は関係ないという態度に終始しているのは腹立たしい限りで、父親が亡くなったから、これで終わりということは決して許されるものではない。種子田益夫が債権者たちから融資を受ける度に「牛久愛和総合病院は病床数が500前後もあって大病院ですから500億円以上の価値がありますので、決して問題はありません。息子の吉郎も『父からの預かり物なので、いつでも必要に応じてお返しします』と言っている通りでから、大丈夫です」と繰り返し言い続けてきたことを、吉郎も益代も、そして安郎も深刻に受け止めるべきであり、監督機関もそれぞれに常仁会病院グループに対して的確な指導強化を図ることが求められる。種子田吉郎ほか益代も安郎も、このまま放っておいても何も問題は起きないと思っているのかも知れないが、それは大きな間違いだ。そう遠からず各方面に影響が出るのは必至の状況にあり、そうなってからでは取り返しがつかなくなることを十分に認識すべきだ。(つづく)