鈴木義彦ほか当事者たちの「偽証」「誤判」は何故罪にならないのか④

貸金返還請求訴訟では、鈴木も、平林も長谷川も嘘に嘘の証言を重ねたが、それ以上にそれらの虚偽を見逃してひどく誤った判決を下したのが品田幸男裁判長である。A氏と鈴木の間で授受のあった15億円と10億円は動かしがたい事実として、その全額を鈴木の債務返済と認定するために、合意書及びそれ基づく株取引、さらに株取引のほぼ全てを独占して海外のタックスヘイヴンに隠匿している事実の一端が発覚したことで、鈴木が利益が60億円であることを前提にA氏と西にそれぞれ25億円、A氏には別途に20億円を支払う約束をした和解書を全て無効にしてしまった。その判決がいかに実態を無視したものであるか、そして鈴木の犯罪疑惑を故意に隠蔽したとしか言いようないものであったかが、A氏側の主張と証拠類で判明している。

品田幸男(東京地裁裁判官)

西が鈴木の代理人である事実を否定

品田裁判長は判決で「被告が西に対して包括的な代理権を授与した旨のA氏主張事実を認めるに足りる証拠はない」(判決文17P14L)と認定して、西が鈴木の代理人としてA氏に対応していた事実を認めなかった。これは品田裁判長の重大な誤審である。鈴木に対する貸金についても、株取引の実行についても西が鈴木の包括的代理人でなければ、A氏の鈴木への対応は全く違うものとなり、そもそも鈴木との関係すら発生していなかった。判決では平成10年12月28日付けの約定書について「西義輝が鈴木義彦の代理人としてA氏から本件腕時計を預かり、A氏との間で平成11年3月末日までに4億円を支払うか、本件腕時計を全品返すかを約束した旨の記載がある」と触れていながら、西が鈴木の代理人であるかについては言及さえしなかった。西が鈴木の代理人としてA氏に対応した事例は、 

  • 鈴木に対する貸付が開始された当初、西が「お願い」と題する書面をA氏に差し入れ、鈴木が担保に供したエフアールの約束手形を金融機関に取り立てに回さぬよう依頼し、返済期日の3日前までに現金で支払う約束をしている。西の行為はA氏の鈴木に対する貸金に係る連帯保証責務を超えるものであり、包括的代理人であることを裏付ける。
  • 西は平成10年12月28日付でA氏に「約定書」を差し入れ、高級腕時計13本の販売委託を受けているが、その約定書に西は「鈴木義彦代理人 西義輝」と明記している。当時、鈴木は100億円以上の不正融資を引き出した親和銀行事件で逮捕され保釈されたばかりであり、愛人の住居に身を寄せながら朝から酒を飲むような自暴自棄状態にあった鈴木を西は励ますために日参していた。それ故、鈴木の再起を図る目的でA氏に懇願し、その一つとして時計の販売委託を受けたものであったので、肩書に「鈴木義彦代理人」と書き記した。鈴木はペア時計の3セットを元証券マンの中村氏に持ち込み6億円を借り入れた。
  • 平成11年5月31日に西が宝林株800万株の買取契約を結んだ。買取資金の3億円はA氏が出したが、鈴木が、受け皿となる外資系投資会社3社(実体のないペーパーカンパニー)を斡旋したフュージョン社の町田修一を契約に立ち会わせて全株券を受け取らせ、また翌日に金融庁へ大量保有報告書を提出するに当たり、常任代理人の杉原正芳弁護士に指示して資金の出所を「紀井義弘」とする虚偽記載をさせるという工作を行った。紀井氏は全く聞いておらず、その事実が分かった平成20年3月31日付で杉原弁護士に回答を求めたが、杉原弁護士から一切回答はなかった。
  • 同年7月30日、西がA氏の会社を訪ね「宝林株取引の利益です」と言ってA氏に15億円を渡した。A氏は「合意書」に基づいて3等分すると考えたが、西が「私と鈴木の取り分は返済金の一部に充当してください」と言ったことから、A氏が全額を受け取り、そのうちから1億円を西に渡し「鈴木さんと分けなさい」と心遣いを見せた。翌31日に西と鈴木がA氏の会社に来て、15億円の処理について確認するとともに西と鈴木が5000万円を受け取ったことに礼を述べた。
  • 鈴木に「確認書」(平成11年9月30日付)を交付するに当たり、それまでに金利を含め一切返済が無かったことから交付をためらうA氏に対し西が約束手形13枚の額面総額の借用書、並びに「確認書についても平成11年9月30日に完済して一切の債権債務はないという書類になっていますが、これも鈴木義彦氏に頼まれ便宜上作成されたものです。平成11年9月30日はA氏(原文実名)には一切返金されていません」とする「確認書」をA氏に差し入れることによってようやく交付するに至った。A氏から受け取った「確認書」を西は鈴木に渡し、その場でA氏に架電し、電話を代わった鈴木が「この度は大変に無理なお願いを聞いて戴き、本当に有難うございました」とA氏に丁重に礼を述べた。
  • 平成14年6月の時点で鈴木がA氏に負っている債務総額は、年利15%で計算すると40億円超に、また遅延損害金年30%で計算すると60億円超になっていた。ただし、鈴木が平成9年10月15日付で3億円を借り入れた際の借用書には「年利36%、遅延損害金年40%」とあり、遅延損害金の40%で計算すると70億円超にものぼっていた。6月20日頃、A氏が西に鈴木の債務返済について尋ねた際、西が「今後の株取引の利益が大きくなるので」という理由で鈴木の債務を圧縮して欲しいと懇願したことを受け、A氏は25億円にまで圧縮することを了解した。西が鈴木をA氏に紹介し、鈴木の資金繰りに協力することになった当初から、西は鈴木の債務について連帯保証をし、包括的代理人としてA氏に対応してきた。

高級時計及びピンクダイヤと絵画の販売委託に係る準消費貸借

品田裁判長は判決で「合計上代45億円相当の価値を有するという本件腕時計を合計4億円で販売することを委託するというのは、そもそも経済的に極めて不合理な行為というほかないところ、前記約定書(西が代理人として高級時計を預かった際にA氏に交付した)においても、販売価格の決定過程に関する客観的かつ合理的な説明はされていない」(判決文14P26L)と認定したが、鈴木は高級時計を扱っており、A氏に売りに来たこともあったくらいだから価値を知っていた。それ故、鈴木が多額の借金で困っていることを知ったA氏が鈴木を助けるために原価を大幅に割った価格にしてあげたA氏の心情に気づいていて感謝したはずだ。 

また、品田裁判長は「本件絵画等の委託販売については、エフアールが会社として責任をもって行うことが合意されていたとみるほかないから、A氏から本件絵画等の販売委託を受けたのはエフアールであり、被告個人ではないというべきである」(判決文16P5L)と認定したが、販売委託に対する責任がエフアールにあると言うのであれば、天野は同社の代表取締役(最高責任者)として全てを承知していて必要に応じて同席していたはずだが、手形交換他一度も商取引には同席していないし立ち会ってもいない。全てが鈴木個人であることは周知の事実であった。絵画とピンクダイヤは鈴木個人がA氏に売りに来たもので、鈴木の希望通りの3億円で買って上げたが、絵画について鈴木は「近々持参します」と言っていながら一度も持参していない。実際に現物の絵画を見ないで買う人はいないと思うが、高級時計と同様に鈴木が困っていて助けようとしていることを裁判官は全く理解していない。それどころか、鈴木はピンクダイヤと絵画はA氏から買ったものだという全く逆の主張している。こんな個々の解釈で間違いだらけの裁判官が正しい判決を出せるはずがない。

親和銀行不正融資事件での鈴木に一切言及せず

鈴木が親和銀行不正融資事件や山内興産事件でどのような手口を使い、相手を騙したかについて品田裁判長が検証した気配が全く見られず、当然、鈴木の前科前歴を含めた人間性についても考慮した形跡はなかった。鈴木は親和銀行事件で有罪判決を受けたが執行猶予がついた。親和銀行に対して和解金約17億円を支払ったためであるが、その資金の出所を的確に追及していれば、合意書に基づいた株取引が継続して実行された事実が裏付けられた。鈴木に対する判決は平成12年9月に言い渡されたが、保釈から2年に満たない期間でこれだけ巨額の資金を調達した経緯を検証しないことに問題がある。しかも鈴木は山内興産に対しても和解金約4億円を支払っている。いずれも判決文には反映されていない。

合意書を無効とした誤りおよび平成11年7月30日付の15億円を鈴木の返済金とした誤り

品田裁判長は判決で「株取扱合意において定義されるべき分配対象利益の内容及び範囲は、余りに無限定というべきものである」(判決文21P13L)として、銘柄欄が空欄であること、宝林株以後に実行する銘柄の特定が無いこと、3人それぞれの役割と業務内容が規定されていないこと、利益の処理方法が明確ではないこと等を挙げたうえで「A氏、西及び被告が具体的に協議したり、個別の契約を締結したりして、株取扱合意書の内容を補完したといった事実は認められない」(判決文22P1L)と断じて「被告に対して法律上の具体的な義務を負わせる上で最低限必要な程度の特定すらされていないものといわざるを得ない」(22P5L)と結論付け「合意書」の有効性を認めなかった。銘柄の特定が無いのは当然で、決まっていたのは宝林株だけであったために「合意書」には「今後本株以外の一切の株取扱いについても、本合意書に基づく条件をそれぞれに負う」と明記している。どの銘柄を宝林株以後に取り扱うかは状況次第であるから明記できるはずがない。

また、「(15億円の支払の充当先について)A氏は、株取扱合意に基づく株取扱利益の分配債務に充当されたと主張するが、株取扱合意は無効であり、被告がA氏に対して株取扱利益の分配債務を負う余地はないから、A氏の上記主張は採用できない」(判決文16P25L)、「A氏の主張によれば、A氏が株取扱に関して、被告及び西に対して提供した金額は207億円に上っていたというのであるところ、仮にそれが真実であるとすれば、株取扱合意に基づく分配対象利益の分配が上記7年以上の間に上記の2回しか行われず、その額も上記の2回程度しかなかったにもかかわらず、平成18年10月16日の三者協議に至るまでの間に、株取扱合意の履行が適正に行われているかについて三者間で協議が持たれなかったというのであるから、一層不自然というしかない」(判決文22P22L)

としたが、A氏が株価を維持するための買い支え資金を継続的に出した事実は西が書面等で確認していることである。合意書を交わして以降、A氏と西、鈴木が3人で会ったのは平成11年7月8日、同年7月31日、同14年6月27日、同18年10月16日の4回に加え、西が鈴木の代理として会った平成11年7月30日、同年9月30日、同14年6月20日、さらにA氏が鈴木と会った平成14年12月24日、同18年10月13日、同年10月23日を合わせれば合計10回は面談を重ねている。株取引の実行にあたり鈴木はA氏を避け続けて真っ当な報告をせず、長い間、西に言い訳ばかりをさせていた。鈴木がそのたびに西に金を渡して懐柔していたこと、それにA氏が何年にもわたり興信所を使って鈴木の所在を調査していたこと等について何ら検証していない。

確認書(平成11年9月30日付)に対する誤り 

品田裁判長は判決で「前提事実、及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められ」として、その(6)で「被告は、平成11年7月から9月までの間に、A氏に対し、一度に15億円を支払った」という認定事実を挙げているが、この15億円は株取引の利益の一部であり、西と鈴木が実行した株取引の結果生じたものであるので、鈴木の債務返済とする認定は明らかに間違いである。

志村化工株取引で逮捕された西義輝への対応

審理では志村化工株の相場操縦容疑で西義輝、武内一美(ジャパンクリサイスファンド)が東京地検特捜部に逮捕、起訴され、有罪判決を受けた事実関係についてほとんど検証されていない。合意書に基づいた株取引が実行された事実を検証するためには、この事件は不可欠であったはずだ。それ故、品田裁判長は鈴木が株取引を行って利益を出していたとしても、合意書に基づいた株取引とは関係ないと強引な認定に基づき判決した。その判断のもとに紀井の証言、陳述も軽視して「紀井は被告の指示に基づいて株式を売り、売買代金を保管するという立場に過ぎず、株取扱いに必要な資金を誰から取得し、どのようなスキームでこれを運用し、株取扱いにより得た利益を誰にどのように分配すべきかといった、株取扱いによる利殖活動の全体像を把握できる立場になかったのである」(判決文23P10L)と誤った判断をした。紀井の証言は鈴木と西が実行した株取引で利益が上がったという事実の指摘であり、鈴木と西の実行した株取引が「合意書」に基づいたものであった事実は「合意書」の存在そのものが裏付けている。 

品田裁判長が西を鈴木の包括代理人と認めず、また西が死亡したことで自身の証言と言えるものが記録しかないにもかかわらず、それらの証拠を排斥したのは明らかに故意としか考えようがない。

15億円の借用書作成を巡る対応 

平成14年12月24日に鈴木が紀井を同行してA氏の所へ10億円を持参した事実について、品田幸男裁判長は西が持参した15億円に対する認定と同様に合意書無効を理由に返済金と認定したが、同年の6月27日に鈴木が直筆で書いた15億円の借用書の存在について、借用書の作成経緯(金利を含め40億円超の貸金を25億円にしたのは、株取引の利益が大きく出るとの西の話によるもので、さらに西がA氏への返済金の一部10億円を受け取っていたことを認めた等)をしっかりと検証しないまま文字通り金銭授受があった事実から返済金としたもので、合意書と和解書を無効にするとの誤った事実認定から導かれた誤判である。 

和解協議並びに和解書(平成18年10月16日) 

品田裁判長は判決で「無効な株取扱合意に基づく債務、すなわち法的には発生していない債務に関する争いを解決するものとして、合計50億円の和解書に署名指印し、合計50億円の和解契約を締結したものである。したがって、合計50億円の和解契約における被告の意思表示は、表示意思に対応する内心的効果意思を欠くものであり、かつ、被告自身もそのことを認識しながら敢えてしたものというべきであるから、心裡留保(民法93条)に該当する」(判決文28P12L~ ) 「20億円の和解契約について、A氏が主張する事実に沿う客観的な証拠はない。また、株取扱合意は無効であり、平成18年10月16日時点において、15億円の準消費貸借契約に基づく被告の債務は存在していないところ、そのほかに、被告がA氏に対して2年以内に20億円を支払うこととする原因たり得る事実は、本件全証拠によっても認められない。以上によれば、A氏及び被告が20億円の和解契約を締結したという事実は認められない」(判決文29P2L~)と認定したが、いずれも前記鈴木義彦の和解書の記述にある通り大きな誤りを犯している。万一、強迫や心裡留保があるとすれば、鈴木は逃げ回ることもなく、警察に通報すればよかったが、それをしなかったのは何故か。父親の地元の警察署に関係者が集まった時ですら現れなかったし、警察署の刑事に「明日、必ずA氏に電話する」とい言っておきながら、それも一切なかった。これらのことを踏まえて品田裁判長はどのように説明できるというのか。

和解協議ならびに和解書作成後の鈴木の言動を無視

品田裁判長は、利岡襲撃事件について一切触れていない。しかし、鈴木の周辺関係者が10人前後も鈴木義彦の異常な金銭欲のために犠牲になり、自殺や不審死、あるいは行方不明に追い込まれたといった状況を踏まえれば、襲撃事件を無視することはできなかったはずである。しかも、事件の実行犯が所属する習志野一家のNo.2である楠野伸雄と青田には当時で20年来の交流がり、事件直後に青田が口止めをしただけでなく平林英昭までが同一家総長と2回以上面談している事実から、「和解書」の支払約束を反故にした後の交渉と何らかの関連性があるとして検証し、その判断を判決に記載すべきである。しかし品田裁判長は、合意書と和解書を強引に無効としたために、故意に無視をして判決に触れなかったとしか考えようがない。(つづく)