A氏の会社にて合意書の履行に係るA氏と西義輝、鈴木義彦による協議が始まると、西が鈴木に尾行を付けられていることに抗議したが、鈴木はそれを否定したうえで、話を変えようとした。

西   何で俺に尾行なんかつけんの?

鈴木  何、尾行って?

西   青田を経由してさ、

鈴木  尾行なんかつけた事ないよ

西   まあふざけた事言わないでよ、だから尾行まかれたんだろ、俺に。

鈴木  そんな話は今いいよ

西   俺に、尾行つけてるじゃない、あなたのやり方、いつものやり方じゃん、そこから色々と始まってる。

鈴木  そんな事は一切無い。

西   ちゃんと内通者がいるから。聞いてるから尾行まいたんだよ俺は。俺、相当鈴木さん、警察や社長からも貴方を守ってきてるつもりなんだけど。いろんな面で、鈴木さん、これどうするんですか。いろんなこの念書とか、覚書とか合意書とかあるけど。貴方の、一番側近の人間が二人とも俺の事をすごく惨めにかわいそうに思って、全部教えてくれたんだわ。

鈴木  それがどうした。

西   どうしたじゃないよ、貴方いったいね、ずっとこの6年間、どんだけのお金稼いできてるの。

鈴木  何言いたいの?

西   合意書があったからこそ、貴方の所に今、金がある。だからあんた、それに対してちゃんと答えるべき義務があるんじゃないの?

A氏  合意書を作成する時に、2人はいくら金があった? 借金しかなかったはずだ。どれだけ株で金が出ているか、それを1回ずつ精算して3分の1ずつにするのが約束だろ、これ。2人ともチョンボしたら、取り分は1銭も無いんだぞ。鈴木さん、この文書、そんな無視出来るような文書じゃないぞ、これ。

鈴木  何でですか。俺は、でも社長ね、ジャス(宝林)のところに社長が金を出して、それを運用して儲かったのを3等分しましょうと、そうですよね。

A氏 そうだよ、合意書通り今後全ての株取引を1回ずつ清算して分配する約束だよ。これは今後3人で株をやるが、二人とも金がないので、私に金を都合してほしいという事でスタートしたんじゃないか。先週の金曜日に、これ宝林の分だけじゃないですかって、鈴木さんは言ったけど、宝林の分だけだったら何でこんな合意書を作成するんだ。これ見てよ、ちゃんと文章を。3人が直筆でサインして合意で作った合意書じゃないか。これは鈴木さんと西の懇願で、あの時株をやるからって、あなた方2人は借金だらけで金が無かったじゃないか。それで俺が元銭を出してその後も随分買い支え資金を出してる、それでやった事じゃないですか。

(写真:平成11年7月8日、A氏と西、鈴木が交わした合意書。A氏から株取引の買い支え資金を引き出すために鈴木は一人熱弁を振るった)

鈴木  最初、ジャスで儲かった分を精算してんじゃないですか。

A氏  精算するって鈴木さん、貴方1回読みなさいよ。オークション(西の会社)に払う手数料10%残して90%を三等分するっていう話じゃない、鈴木さん。これ、よく読んでごらんよ鈴木さん、「今後一切の株取引」と明記されている。それは鈴木さん、それを無視するのはできないよ。誰にでも見てもらっていいけども、無視できるような文章と違うよ。

鈴木  幾ら儲けたって何で分かる訳? 幾ら儲けたって何で分かるんですか?

西   第3者割当の値段から、貴方の株式担当の人間が売ってる金額で分かる。

A氏  じゃあ鈴木さん、信用してよって言うんだったら、あなたも全部オープンにしろよ、だったら今回は。

鈴木  オープンにして下さい、全部、誰が何を言ってるのか。じゃあ何でその本人を呼んじゃいけないんですか。

A氏  それは、貴方の言う事はよく分かる。ただ、俺は直接聞いてないから、ちょっと俺は名前出すのは・・

西   僕もしたくないです、それ鈴木さんが一番よく知ってる事ですから、紀井、茂庭しかいない。

鈴木  社長ね、色々オープンにして社長とまあ話するのは良いです。ただそこらへんを本当に明確にして、俺ももう言ったから、そういうの(紀井氏への報復)はしないから。それでもし彼が言ってる様に俺が幾ら稼いでると、だったら俺も命落としてもいいよ、社長。

A氏  本当だね、本当だね、よし分かった。そこまで言うんだったら、もうそれでハッキリさせよう。紀井さんの確認書を参考に、鈴木さん、あなたの利益を言ってみな。これを、あんたら二人(西と鈴木)だけで分けようと思ったって、それがあったっていうのは、そんなの本当になあ、人を欺いているよ、お前さん方は。

鈴木  そんな話は元々無いですから。

A氏 それは無いの? それは無いの?

鈴木 そんなの無いよね。

西  あるんじゃないんですか? (注:合意書を破棄したと思っていた鈴木は、そのために西に10億円を払っていた)

鈴木 その話は、それで?

西  鈴木さんの代理になってやったっていうのが沢山あります、過去に。鈴木さんのやり方ってのは、僕分かってます。(注:裁判の後半で鈴木は「西を代理人にしていない」と言ったが、よく言えると思う)尾行については紀井が教えてくれたよ、今日からつきますよと、(鈴木に向かって)そりゃ無いだろう?

鈴木 それは無いって。

西  無いはねえだろう、いくら何だって。

鈴木 無いよ、それは。

西  鈴木さん、原点に戻そうよ

A氏 原点に戻そうよって、これ、原点に戻すしかないんだ。

鈴木 俺はだからさっき言った様に、さっき思われたのは、ね、申し訳ないけど、グーで脅かされてるのかなと思ったわけ最初。 (注:本当に脅かされているという意味で「グーで」と鈴木は言ったのか?)

A氏 俺ねえ、鈴木さんねえ、脅かすって言うんだったら、こんな話合いはしない。ちゃんとしないと問題になるよっていう一言で終わります。

鈴木 (合意書のことは)知りませんでしたっていうか、頭にありませんでした、と言ってるんです。(注:鈴木は合意書の破棄を西に頼んで、何年も前よりないものと思っていたようだ)

A氏 ああ、忘れたっていう事だね。

(注:鈴木は西に合意書破棄を頼んでいたことを最後には認めている)

西  ちょっと聞いて頂けますか、あれがこう言った、これがこう言ったじゃなくて、僕はこの部分を原点に戻して、ちゃんとこの処理をまずして頂きたいと思います。

A氏 もちろんそれはそうだよ、当たり前。それは、だけど株の取引全て知ってますよ、紀井さんは。

鈴木 いやそうだけど、紀井は売りしかやってないの。(注:紀井氏は鈴木より知っている。売値は全て紀井氏が決めていた)

西  今回ちょっと原点に戻して話しませんか。恥をさらすのはやめませんか、お互いに。(注:西が鈴木に対して)

鈴木 ただねえ、俺ねえ、これだけ、じゃあハッキリ言わせて下さい。

A氏 言って、言って、何でも言って。

鈴木 これを元に原点にねって言われると、どうしても納得いかないんですよ。

A氏 ちょっと何でよ、鈴木さん。

鈴木 俺はそういう気が無くって、やってきたから。それはね、義理も何も絡んでるし、世話になったと思ってる。(注:合意書作成では、西より鈴木が殆ど一人で話して、これをやって戴けないと、2人は社長への借金を返せない、とまで言って懇願した)

西  鈴木さんね、原点に戻ってね、あの苦しい時の事思い出そうよ、ね。本当にさあ、ただ鈴木さん、そうは言ったって、紀井さんだけが喋ってるんじゃなくて、茂庭さんも話してるんだよ。

鈴木 それは有り得ないよ。

西  私はその点(合意書破棄)に関しては無視しましたので、それだけは出来ないって思ってたから 自分の中で。

鈴木 そんな事は言った事も無いですよ、本当。

西  書類(合意書)は全部破っといてって言ったじゃん、それは認めなよ。

鈴木 それは破っといてくれって、それは自分なりにけじめはつけたと思ってましたから。いや忘れてました。(注:鈴木は西に合意書破棄を頼んで紀井氏より花館に複数回で10億円を渡している)

A氏 いや鈴木さん、忘れたって言ってるが、鈴木さん、これを見て。「こんなもの(合意書)があって酷過ぎます」と言う鈴木さんのブレーンの話がテープ入ってるんだから鈴木さん。

西  鈴木さん、他でも苦しんだんだから、それ今そういうふうになったら、やっぱり原点に戻って1回さあ、やるべき事をちゃんとやって。

A氏 それでお互いなあ、西もそうだけど、足引っ張り合うような事やめな。それも一切もう無しにしな。

西  尾行されてます、100%。その尾行がついた日には連絡が入ってます。

鈴木 何の為にするの、それ?

西  俺が聞きたいよ。まあ、何か俺の事を、 嘘が多いって言ったが、そっちの方が、もっと大きな意味合いの嘘が多いんじゃないの? それはやめようぜ、そういうのは。

A氏 これ交してから。(注:合意書を交わしてからA氏は西には何回も言ったが、西は「鈴木は1DKのマンションで一人で頑張っているので、長い目で見てください」と言っていた)彼(西)には何回も利益のことを言ってます。そしたら、鈴木は今ワンルームのマンションで金が全然無い、俺が聞いている話と全く違うよっていう事を何回も言ったんだけど。彼は知ってたけれども、何で鈴木さんを庇ったかって言うのは、俺は、やっぱり二人で山分けしようかと思っていたのかと、俺ちょっと思った。

(注:合意書破棄を西に執拗に迫り、その礼金として10億円を渡したことと、宝林株800万株の取得資金3億円をA氏が出したことの2点について西に「これくらいは認めろよ」と言われ、鈴木は頷き間違いないと答えた。鈴木は利益が60億円であることを前提にA氏と西にそれぞれ25億円を、A氏にはこれとは別に20億円を支払う約束をしたのである)

【解説】

ピンクダイヤと絵画、高級時計の委託販売に係る経緯

平成10年5月28日に鈴木がA氏に電話を入れ、単独でA氏の会社を訪ねた際に、A氏に事前に言い値の3億円で買ってもらっていたピンクダイヤと絵画を「売らせてほしい」と言って「念書」を提示した。A氏は了解して、販売委託したが、鈴木は裁判では、平成9年10月15日に西と鈴木がA氏の会社を訪ね、3億円の借り入れを受けた際の借用書を持ち出し、「ピンクダイヤと絵画はA氏から3億円で買ったもので、売買代金に当たる3億円の借用書を書いた」と、とんでもなく支離滅裂な主張をした。鈴木が持参した借用書には、但し書きに日本アジア投資の投資証券1億円を担保にするとあり、ピンクダイヤと絵画には一言も触れていないことや7か月間もの時差があることで鈴木の虚偽であることが分かる。

(写真:平成10年5月28日、鈴木がA氏に提示した念書。言い値でA氏に買ってもらったピンクダイヤと絵画を売ると言って持ち出した)
(写真:3億円の借用書。平成9年10月15日、鈴木と西が同行してA氏に持ち込んだ。但し書きに「日本アジア投資の投資証券(1億円)を担保提供する」とある。鈴木は後日、この借用書がピンクダイヤと絵画をA氏から買った際に準消費貸借で作成した借用書だと主張したが、念書との整合性が無いだけでなく、ピンクダイヤを借り出す7か月も前の借用書との整合性も取れる訳がなく、借用書の但し書きを見れば支離滅裂な主張であることがすぐに分かる)
「確認書」(平成11年9月30日付)に係る経緯

A氏は平成11年9月30日付けでエフアール(実際には鈴木義彦)に対して「債権債務はない」とする「確認書」を交付した。鈴木はA氏から融資を受ける際に手形か借用書を預けていたが、決算対策上は処理しておかねばならず、前年の平成10年9月にも手形の原本を西経由で天野常務に渡して、監査法人の監査終了後に問題なく戻ってきたため、同様に協力したものだった。それまで金利を含めた返済が一切ない鈴木に対して確認書を出すのをA氏は躊躇ったが、西が手形13枚の額面総額の借用書を書き、さらに鈴木に交付する確認書は飽くまで便宜的なものであるとする確認書を書いてA氏に差し入れたことでA氏はようやく了解した。確認書を持ち帰り鈴木に渡した際、西がA氏に電話をして鈴木が代わり、「この度は無理なお願いを聞いて戴いて、本当に有難うございます」と礼を述べている。

(写真:平成11年9月30日、A氏は鈴木の依頼により手形原本のの戻しと「FRに対し債権債務はない」とする確認書を交付したが、西が手形13枚の額面総額の借用書と「確認書は便宜上作成された」とする確認書をA氏に差し入れた。同社の決算対策で便宜的に作成されたのは明らかだ)
(写真:平成11年9月30日付確認書。鈴木にFR社の手形を戻し、併せて交付した確認書が便宜的なものであることを西が確認した)
(借用書:平成11年9月30日、西がA氏からFR社の手形を預かるに当たり、借用書を差入れた)

ところが鈴木は手形の原本が手元にあることと確認書を盾にして「平成11年9月30日に15億円を支払い、完済した」と主張した。鈴木の言う15億円とは、西が同年の7月30日に「株取引の利益」と言って持参した15億円を指しており、9月30日には金銭の授受は一切なかった。エフアールの代表者だった天野裕は、「前年の平成10年9月にも決算対策のために西さん経由で手形を預けて頂き、終了後に再び西さん経由で社長(A氏)にお返しした。会社には精算するべき資金はなく、平成11年当時の確認書も便宜上のものと認識している」と鈴木の主張を否定した。そもそも鈴木への確認書の交付は、その前提として西がA氏に手形13枚の額面総額の借用書を書き、さらに「確認書は飽くまで便宜的に作成された」とする書面を書いている。(以下次号)